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自由と人間の境界:あたしのさよならはあたしがきめてみせる。 [本編]

此方小説は、浅海由梨奈さんのみ、お持ち帰り可能です。


自由と人間の境界
~引く、牽く、退く、惹く~

登場キャラ:バルベルさん おじさん 黒双子
ちょっと:三つ子(回想のみ) 真実の子(ほんとにちょっと)

エロくない度:★☆☆☆☆
精神有害度:★★☆☆☆
(由梨奈さんちの淫魔パラレルです)
(色々と設定が違います)
(前回の話から、数日後の話です)
(今回はエロくない)

【設定の差異】
☆御一家全員異端審問官
☆&人間
★おじさんは純血淫魔に限りなく近い何か






町の中心部から遠く離れた郊外、そのホテルはひっそりと……だが確かな存在感を持って、そこに永い時の間、建ち続けていた。
そう大きな建物ではない、裕福な時代に建てられた物としては、やや小さく。古い時に造られた物だけあって、奇妙な不気味さを醸し出す。
ホテル、だが、この建造物に寄り付く人間はそういない。疎らに細い木の生えた、痩せた地を踏むのは、元より此処に住む住人。彼らの足跡だけを残している。
このホテルは、彼ら【異端審問官】が周囲の土地ごと買取り、古い内部を改装して、自分達の住み良い住処に変えたのだ。
異端審問官とは、淫魔を狩る世界に一度踏み入れれば、入り口から最深部まで、彼らの名が絶える事は無いだろう。
彼らは暗い影の世界に常に暗躍し続け、時に要人の護衛を、時に淫魔討伐を、時に技術研究・開発を、時に注意人物の監視を、時に罪人の拷問を。
全てを正義の裁きの元に、時として枢機卿にすら匹敵する地位を持つ、ありとあらゆる闇を駆けし、無法の中の人の世の裁判官。

彼らは、人間の正義。

だがそれでも、この古い屋敷に人が訪れる事は無い。

誰も、この屋敷に訪れる事を禁じた訳では無い、此処は人の領域だ、人の領域を守る人間の屋敷だ。

異常なまでに静まり返り、ただ只管なんの色も無い風が、薄緑色の日に焼けた野草を揺らす様は、高名な芸術品を元に作られた、出来の良い贋作の光景を切り取ったようで。
まるで、まるでそこだけが異常と言わんばかりに、そこにある全てが時に取り残された姿をした屋敷を中心に、歪んでいた。

今日も色の無い風が吹く、それに混じる、死の香りも。



自由と人間の境界
~引く、牽く、退く、惹く~



茜色に染まる空、海が太陽を飲み込み、西の空には暗い夜が首を擡げ、生きる者の時間が変わる事を、空が身を持って告げる頃。
この広い街、郊外の更に外れた、奇妙に人の無い場所にある、古風だが頑丈に作られた門の前に、この時間帯で見るには珍しい影一つ。
蝙蝠の様な一対の羽、悪魔を表す様な尾、人外の色の肌。だが、それを纏っているのは、美しく艶かしい女の形。淫魔だ。
彼女は門柱に軽やかに飛び乗ると、その門の先に広がり続ける、静寂な世界を眺めて、目を凝らしてみる事の出来る、微かな灯りに目を細める。
手には琥珀色の鍵、結晶で作られた鍵は、彼女の手の中で光も無いというのに、キラキラと静かに光り、それをもう一度見た彼女の足を進めるよう促す。
淫魔は誰も、門番一人居ない門を無い物の様に越えると、灯りのある方角に向って飛び出した。

「さーっすが……無駄に広い、けど本当に何も無いのね」

淫魔は羽を動かしながら、まるで終わりが見えない荒れた道を辿って、そう愚痴る。尻尾はへにょりと折れて、特に力も無い。
『庭には何もも無い』彼女に鍵を渡して、この屋敷に来る理由を作った子供は、その鍵をじっと見ながら静かにそう言っていた。
広い所には何かある、この都会で暮らしている彼女の常識だったが、その常識はこの道の前では通用しない。
こんなにも、静かで何の音もしない空間にいるのは、彼女の生の中で一度でもあっただろうか?
少し羽を休めて、もう一度飛ぶ。疲れている訳では無いが、おそらく十分はこうしていると、いい加減退屈なってくる。
淫魔にとって退屈は敵だ。時に命取りになる程に。そして、この飛び続ける彼女もまた、退屈は『退』の字が浮んだだけで蹴り飛ばしたくなる程、退屈が嫌いだ。

「引き返しちゃおっかなー……」

また一言、誰に言うでもなく愚痴る。まだ尻尾に元気は無い。今度は羽にも元気が無く、どんどん下がる高度と共に、近くにある小さく出っ張った石に着地する。
実は、本当は彼女一人で、此処に来る予定ではなかったのだ。本当ならば、鍵を渡した三人が屋敷に招待するという形で、最初のこの屋敷に来る予定。
だが、それも今は絵空事、なんの理由かは知らないが、あの三人は理由も告げずに約束に行けなくなったと、たった一言告げて消えてしまった。
それでも予定の日までの枕話、じっくりと未知の世界の話を聞かされた彼女の好奇心は、とても『また明日』の通用する程弱くは無く。
今はその三人には秘密で、同族を狩る怪物の頤に飛び込んでいる。淫魔として生きて長い彼女には、それ位解っている筈、一体何を考えているのやら。
引き返そうかと後ろを向くが、引き返すにしても同じ距離を飛ぶ事になる。なら、いっそ前に進んだ方が、何時か退屈が終わるという意味では、多少マシなのではないだろうか。

灯りは若干近くなっている、あの屋敷に永遠に近づけないという訳ではない。
一度伸びをして、ついでに出た欠伸をして、羽を強く広げ直すと、淫魔は、バルベルは早く早くと前に前に、また飛び始めた。

若干、尻尾を高く上げながら。



それから何分か、思いの他早い時間に、バルベルは灯りの根元を掴んだ。
灯りの根元は聞いていた通り、古いホテルを直して作られた大きな屋敷。でも、こんなに大きな屋敷を前に、一種の人間達は小さいと言うらしい、やっぱり人間の感性は理解出来ない。
此処に来るまで、本当に退屈な道の数々だったが、屋敷の形が見える頃になると、何も無いというのは徐々に訂正された。
仰々しいガーゴイル、枯れたような蔦だらけのアーチ、苔だらけの白磁の壷、その中の蛍光色の苔、頭の無いキューピットの石造、その無い首からドバドバと無限に出る水、なんだかよく解らない大小様々な極彩色の魚。
とても趣味が良いとは言えないが、バルベルがそう見たことのないで、退屈を吹き飛ばすには悪趣味な位が丁度良かった。
そんな庭も終わりを迎え、首から水を垂れ流していた噴水から続いた水路が途切れると、今度目の前に出てきたのは、屋敷の中へ続く頑丈な扉の正面玄関。優しい光を放つ灯りが、辺りに配置されている彫像や、不思議な色の花の様な何かを照らしている。
だがそれでも、その全てはこの扉が開かなければ意味が無い。気取って二、三度ノックしてみたが、反応は無い。叩き破る事は……試したが、簡単に壊れそうも無い。全力を出したら……扉が無くなって、寒くなる。

「あっ、解ったー…、たしか此処をこうするんだったっけv」

その内、扉に仰々しく構える、ライオンの首の装飾を見つけ、バルベルはそれに手を伸ばして、そのライオンの口から出ている金の輪を掴む。
テレビやドラマ、映画なんかだと、古く物々しい洋館にこれはつき物で、これをノックの代わりに鳴らして、中の人間に来訪を知らせる……と、バルベルは記憶している。
早速をそれを試して、ガンガンゴンゴンと力を込めて鉄輪を鳴らしてみる。何分バルベルがこんな物を鳴らしたのは、全くの初めてだったため、必要以上に力を込めてしまったが、簡単に壊れる程ヤワではないらしい。

「ごめんくださ~い」

鼻を抓んだ声で言うと、バルベルはサッと近くの植木に見を隠した。
十秒待たずにそれに返事が返ってくる。

バルベルには考えがあった。
この屋敷が危険だという事は、バルベルだって我が事なため、とてもよく解っている。うっかり捕まった同族は、大体此処に連れてこられて、地獄の様な目に合っている事も知っている。
故に、単独で此処に入るという事は、自ら進んで崖に飛び込む物、明らかな自殺。それでも見たい。聞いたこと無い様な物だらけの、奇妙な世界を。
扉以外から入れば、普通の人間が用心しているのだから、普通の人間じゃない異端審問官が、用心しないなんて考えられない。(正門に誰もいなかったのは、逆に驚いた)
事実、枕話の中には痛そうな侵入者用のトラップの話もあった。これは流石に危険だ。
そこで、バルベルは扉から入る事に決める。正面玄関、みんなの入り口。

「はい、ご用件は」

簡潔で味気無い言葉、声はそこそこ年を重ねた男、それに返事が返ることは無い。
数秒が経過、扉の向こうにあった気配が消える。

バルベルの狙いはこれだ、何度も何度もこれを繰り返し続ければ、いぶかしんだ門番は扉を開けるだろう。
そこが狙い目、少し乱暴だが、開けてくれた親切な門番に軽く眠ってもらって、進入すればいい。方法は幾つもある、得意のアレを使うも、軽く小突くのでもいい。
兎に角、計画は上手く行きそうだ。バルベルはそうして、何度も何度も扉のライオンを叩きまくった。ライオンが可愛そうな程に。ガンガンと。

そして遂に、待ちに待った時がやってきた。
扉はその形に良く似合うギギィという、聞き様によっては少々耳障りな音を立てて、バルベルを先へと誘う。
此処で気を抜いてはいけない、物陰に隠れていたバルベルは、扉を開けて一歩前に出た門番に、音も無く飛び掛った……

つもりだった。

「……は、同族? なんでこんな所に?」

門番が、飛び出そうとした形のまま、周りにある彫像のように固まったバルベルを見て、小さく呟く。
それはこっちのセリフだ。バルベルの目の前には、『変な生き物』が立って、自分の方を死んだ魚の様な目で見ている。
外見は三十後半といった所だろうか、中々男らしい姿、若干人間より尖った耳、やや薄いが薄青い肌、目はサングラスであまり見えないが変な色、全く魔力を感じられない、尻尾は無い、羽も無い、羽はそうかもしれないが、尻尾はしまっている訳でもなさそうな。
こんな変な物、見たこと無い。だがそれでも、バルベルの本能に刻まれた何かは、これが自分達の同族である、純血の淫魔だと認識している。
ただ驚いた位では、これでも命を繋ぐ事に関しては海千山千なバルベルは驚かない、だが、自分の何処かが壊れたとしか思えない自分の反応と、目の前の妙な生き物には驚かざるえなかった。

「あんた、何?」

「…………さあ? 正直俺自身も解らん」

面食らったのは門番もらしく、バルベルを色の無い目でじろじろと見ると、何かを言おうとしたようだが、それを中断してバルベルの質問に身を任せる。
バルベルは驚きから一瞬で帰ってくると、この奇妙な物に対する興味が、まるでさっきの首の無いキューピット像のように、こんこんと湧くのを感じた。
彼が本当に淫魔だったとしたら、本来バルベルは何の興味も持たない筈、バルベルは割と変わり者で、同族の事にも比較的興味を持つのだ。もっとも、性的な意味ではほぼ皆無だが。
しかし、今のバルベルは仮に彼に会ったのが、自分じゃなかったとしても、彼への興味を持たずにいられる同族は無いだろうと、心の深い所で思う。
此処まで奇妙な物は、今まであっただろうか、この奇妙な物を逃がしては淫魔が廃る、バルベルはもう一度口を開いた。

「此処って、アンタの家?」

「ああ、住み込みで働いてんだ」

「ってことは、執事とか、そんな?」

「いや、執事ってより、奴隷って感じだな」

「奴隷なんてやりながら、よく生きてられるわね。
あたしだったら、二日も奴隷やったら……死んじゃうかも」

「随分不躾な事言ってくれるな、ああ、淫魔ってそんなだったっけ」

「??? え? アンタは、淫魔じゃないの?」

「多分、淫魔……だった気がする。
今の状況を考えると、なんかそれ以外の物になってんのかもしんないけどな」

門番はそれを言うと、虚ろな目に消えかけの蝋燭程の光を宿し、突然、バルベルの手を強く引く。引かれた手には力が篭っていて、握られた部分が痛い。
突然の事で対応が遅れたバルベルは、軽くもんどりうって門番の近くに寄せられると、威嚇を込めた反撃として、爪を剥いて門番の頬を切り裂いた。
爪は相手が意識していない事もあって、若干深く入った。薄青い肌が裂かれて、バルベルと同じ、青い血が一瞬滲むが、その傷は次の瞬間には跡形も無く消える。
相手を同族と仮定して、それなりに深く入れた傷。治る事は想定していたが、こんなにも、傷は確かに出来たというのに、血が殆ど流れないなんて。
そんなもの物ともしないで、此方に目線を移した門番に、次の一撃を喰らわせる、今度は確実に再起不能に出来る場所への攻撃を定めた時、門番はまた小さく口を聞いた。

「今直ぐ、此処から全力で飛んで出てけ」

「お断りよ、折角此処に来たのにお土産の一つも無しに帰るなんて、あたしの性分じゃないの」

バルベルはその異形の目で門番を睨みつける。門番はそれすら気にする様子は無いが、数秒の後、目を逸らして何処か宙を見る。
睨んで合わさった目は、サングラスに阻まれてはいるが、バルベルの予想通りに色が薄く、眼病を患った人間と言っても、多少マヌケな人間だったら騙せそうな色。
門番はそれを何度も止める事も無く、何かを考える様な動作をすると、バルベルをもう一度見て、今度は射抜くような声を呟く。

「……屋敷の中に入れ、命が惜しかったら、今から言う事をよく覚えるんだ」

その言葉ほ聞くと続いて、バルベルがその言葉の意味を知る事になる。
近く近く、聞こえるのだ、何かの足音が、自分の通ってきたあの荒道を鳴らす靴の音が。
帰って来た。最も危険視すべき事が起ころうとしている、異端審問官が、此の世で最も警戒すべき、淫魔の天敵が此方に向って歩いて来ている。
この門番が早くに気がついたのは、おそらく慣れというものなのだろうが、人間よりも優れた聴覚を持った淫魔からすれば、その距離も大雑把に把握出来ているのだろう。
今となっては、バルベルの耳にもその距離が解る。水音が途切れる音が聞こえたのだ。水があるのは、あの噴水と、その噴水の水路にのみ。音が途切れる、水を手で裂く音が止む。通り道の水路の終わりまで、彼らは来ている。

水路は、正面玄関の、ほんの目と鼻の先まで続いていた。

「入ったら、一階の一番左の扉を開けて、一階廊下を全力でつっきったら、もう一度角を曲がって廊下を半分、談話室の前まで行ったら、その後ろに一箇所だけ鉄製のドアがあるから、それを開けて、中庭にある格子の嵌った地下へ続く扉を開けて、俺が来るまで隠れてろ……」

「でも、それだったら飛んで屋根とかに隠れたりしちゃダメ?」

「別に構わないが、色々とえげつない物が仕込んであるぞ」

バルベルが当初予想していた事は当たった、やっぱり正面玄関以外にはトラップが仕掛けてあるらしい。
腹に響く様な低い声が、バルベルに命を繋ぐ為の方法を伝える。元々、そこまで余計に物を覚えておくタチではないバルベルも、この状況の危険性だけは解っていたので、おぼろげに全て記憶する。
門番はバルベルの手を放し、一、二歩離れると、目で屋敷に入る事を促して、バルベルから目線を逸らして後ろを向いた。

「ちょ、ちょっとまって。アンタは大丈夫?」

バルベルの言葉を、門番は今から現れるであろう相手を気にしつつ、溜息混じりに答える。

「だから、俺は此処に住んでるんだから、問題ねぇよ」

「そうじゃなくて、なんか……ヤな予感がするから」

その言葉を門番が聞き返す間も無く、帰って来ようとする審問官が、直ぐ傍に迫っている証である、彼ら同士の会話薄く聞こえた。
会話自体はそんなに仲が良いとは言えない様な、どちらかと言えば、一触即発さを醸し出すような、そんな雰囲気の会話をしている。

『それにしても、今日は何故に風が無いのだろうか、折角の三日月が見えなくなってしまうなんて!』

『ハッ、月のせいにしないでよ。三日月は兄さんに会いたくないから、顔隠してるに決まってるじゃん』

『可愛い弟よ、もう一度言ってみなさい。正直に言ったら、このまま土に埋めてやる。生き埋めはラクに死ねるらしいぞ?』

『何度でも言うよ、お月様はアンタの汚い裸照らす位なら、雲の中の方がよっぽど快適だって!』

バルベルは此処で初めて、彼らの足音には、何かの車輪が軋む小さな音が混ざっている事に気が付いた。
だが、今はそんな事よりも早く逃げる事だ、バルベルはその一刻と近付く彼らの正体が気になりはしたが、屋敷の中に転がり込むようにして、その場から逃げ出す。

「助けてくれて、アリガトね。
アンタが人間だったら、いっぱいサービスしてあげたのにv」

その場に場違いな声が一つ、小さく頷く影一つ。

そして、扉が閉められた。
先程より大きく、声の主達の言葉が聞こえる。入れ違い、バルベルが扉を閉めて間も無く、彼らは扉の前に到着した。

『おお、わざわざ出迎えとは、今日は何か良い事でもあったのかい?』

『ちょっと月光浴を、な』

『月光浴か、余も月光浴は好きだ、特に余の如く欠けの無き完全な満月は最高だ、まるで月光のシロップの中を泳ぐような、そんな甘美な気持ちを捧げてくれる』

『よかったね、今日は月が出てなくて。このクソと同じ光を浴びなくて済んで』

扉の外には三人、さっきの門番と異端審問官二人。喋る口調はガラリと二人違うが、声がまるで同じ人間が喋っているかのように似ている。
そして、その響きにはあの三つ子の、鍵を渡した子供に、何処か似た様な、そんな微かな音が含まれて。
何より、扉越しに感じる彼らの性は、それもまたあの三つ子と同じ様な、男でも女でも無い。
同じ、似ている、ならその唇の味もまた似ているのだろうか。

あの匂いも、あの死の匂いも同じ様に。
舌なめずりを軽くすると、少し乾いてしまった唇が、ピリピリとした感覚を残して解ける。

バルベルはまだ扉の前に居た、この声の主達が、どんな人間なのか、それが気になってきた。命の危機、だがそれよりも興味がざわめく。
一瞬の火が、一瞬の命を焼くような。自分は一体何のために此処に来た、あの三人に誘われて、そうだ、知らない場所を見に来たんだった。
あそこに居る物はとても楽しそう、地下へ自分を逃がそうとした彼も、今口喧嘩をする彼らも、隠れている自分よりも、自分の慣れ親しんだ匂いを纏っている。
同じ、似ている、ならその肌の冷たさも、似ているのだろうか。

死の匂いじゃない、自由の香り。

ああ、少し頭から外れていた、するなと言われた事は、とても楽しい事。




次の瞬間、バルベルの体は本人の意思に関係なく、羽も無しに宙に浮く。
白い髪、黒い髪、白い肌、黒い肌、三つの目を持った突風が、バルベルを攫っていった。
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