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おじらむ初めて物語:由梨奈さんのラムちゃんでおじさんがヤバい [番外編]

此方は浅海由梨奈さんのみ、お持ち帰り・転載可能です。



マンモンとルチーフェロ

登場人物:おじさん ベルトラム
(おじらむ解決編)(問題編
(エロはないが匂わせる程度)
(凄い)









昔、誰か子供が作った砂の城が波に流されて、形を削られていく風景をみたことがあった。正に、あれは俺自身の姿だったのだと頭の酷く冷え切った部分が呻き声を上げて、眠らせていた俺の中の最も醜くおぞましい部分が鎌首を擡げ。呻きは唸り声に変わる。
胸の中で死んだようにぐったりとして、それでも健気に弱々しい息を吸って吐くこいつを、俺は俺自身が最も忌んで、二度とすまいと誓っていた筈のやりかたで、犯した。何か酷い目にあう度、まるで子供の様にじゃれついてくるこいつを好ましく思う半面、その無邪気な感情を滅茶苦茶にしてやりたい、と、何時もそう暗い欲を持たずにいられなかった。
柔らかい粘膜に手首まで腕を収めた時はずっと乾ききっていた喉が潤ったような感覚を、その指でゆっくりと脆い内部を抉って深い場所を弄った時ずっと餓えていた腹が満たされたような感覚を、拒みながら半勃ちのままだらだら精液を垂れ流す様子に絶頂すら覚えた時ずっと凍えていた部分が温められたような感覚を、こいつの激痛に喘ぐ悲鳴と引き換えに手に入れたが、それはただの錯覚で。
深い愛情と暗い殺意は同等のものなのだと、まだ人間だった頃に何処かで聞いた事があったが、なら俺は最初からこいつのことを愛してなどしなかったのだろう。俺が欲しかったのは全て、こいつが生きていることを前提にしたもの、生きて喜ぶ顔、生きて苦しむ顔、生きて悲しむ涙、全てが欲しかった。誇りを穢すように胸から染みるものにむしゃぶりつき、鳴かせて、泣かせた。
器官の限界を超えてしまう寸前まで押し込み、いっぱいに広がった場所を見て楽しみ、想像以上の感触に笑みが零れ、スタンガンの効果が切れた後も抵抗をしなくなったお前に、支配欲が満たされて深い快感を得る。中に注いだ時、最初の一回は必死になって抵抗していたが、二度目からは閉じる力を失ってなお絡み付いて快楽を求めるそこの従順さに、歓喜の涙が出て。
全て手に入れた筈、欲しかったものはあの時妥協せずに手に入れようとした、結果を得た、塩辛い涙を舐めとって背を折るほど強く抱き締めた時、何もかもを手に入れたのを確信した、だが、次の瞬間俺に吹き込んだのは虚無感と混乱、どうしたらいいかよくわからなくなって、襤褸同然になった姿に意味にならない叫びが喉を突き、虚ろな瞳に理性と同時に絶望を思い出した。
次の瞬間、脇腹に鉛弾がめり込む感触に、この上なく安堵したよ。


マンモンとルチーフェロ


ふわりとした太陽の光をたっぷり吸い込んだ柔らかい布団と、慣れた自室のにおい、背中に当たるぼんやりとした熱にベルトラムは意識を浮上させる。随分と懐かしく、それでいてずっとそこで眠り続けていたいとも思える優しい感覚に、まだ覚醒と惰眠の間を彷徨う頭をふかふかの枕に埋めて二度寝してしまおう、そんな気になった。違う、あれは夢じゃない、みじろきすると途端に肌にびっしょり汗が伝う。
この背中の熱は生き物の熱、じわじわ皮膚と皮膚を介して染み込んで来るそれは酷く心地良いが、今はまどろみを叩き壊す役割を担った。自分は今何者かに後ろからやんわり抱き締められている、意識を失う前の最後の記憶が一体それが誰なのかを易々と想像させ、腕の重さが僅かな可能性も粉砕する。肩を掴む指先がぴくりと動く。
「息は、出来るか?」
やや上の方から聞こえてくる抑揚の無い声、ざわざわ湧き上がってくる記憶にベルトラムの肩が跳ね、まだ違和感の残る体を動かし、腕を振り払った。囚われていると思っていた指はすんなり外れ、男はそれを追うこともなく、ただ淡々と代えの服の在り処と、念の為用意しておいた上着のことを知らせる。体に残るものは痺れか痛みかと思ったが、心臓に血液が循環してゆくにつれて、それは無くなった。
「……俺の顔を見ない方が良い、顔の再生は済んだがまだ馴染んでいないんだ」
振り返って顔を見ようとした動きを読んだような発言に、立てた肘をベルトラムは下ろし、また布団は平地に戻る。曰く、あの後ベルトラムが意識を失ったのも構わず、凌辱を続けていた男の叫びに気が付いた家人が実力行使を持って男を叩き伏せ、救出されたベルトラムは治療後自室へ、男はとある二人に激しい拷問を受けて帰って来たのだという。鼻と耳を削がれ、目と舌を潰された上、顔面の皮を剥がれて焼かれる、ぞっとする話だがその程度では男は死なない。
飛び起きようとした反動で離れた距離に隙間風が入り、ベルトラムは反射的に布団を引っ張る、心成しか男がずりずり更に距離を離した。二人、というのは彼にも心当たりがある、家人の中でとりわけ残忍な気質を持ったあの二人、悲しいかなベルトラムの嫁でもあって、ニヤニヤ顔を浮かべてやって来る災厄の権化でもある。そんな彼らが仮にも愛情を向ける先でもある者にそこまで怒り狂うとは。
「何時になく、容赦の無い拷問だった」
見えない位置で男は、ふ、と壊れかけたものの表情を浮かべ、自嘲する。無感情は感情を上手く発露させることの出来ない男の、苦肉の策として身に付いたものだったのかもしれない、感情の名残が混じった声は微かに震えていて、完全な無機物にはなりきれない。ベルトラムがもっと布団を引っ張ると、男は自分の布団を其方側に押す。ともすれば、今度こそ手に入れたと錯覚してしまいそうな光景を、冷たい部屋の空気が拭い去る。
全身を包む、独り占めにした太陽の匂い、日溜りに似た温かいものは男の体温、握り締めて絶対にかえす気が無かった布団を握る手を解いても、引っ張り返されたりはしない。羨ましい、と今度は深い切望の入り混じったそれを呟いて、ベッドがぎしぎし傾き、ベルトラムは一瞬身を固くしたが直ぐに男が立とうとしているのだと解った。
「待てよ、お前俺に言うべきことがあるだろ」
もっと声は掠れて痛みを覚えるのではないかと覚悟したが、完璧な家人達の後始末は寝起き特有の水分不足で乾いた感覚こそあれ、きっと何かそういった薬でも飲ませたのだろう、ベルトラムの喉に痛みは無く、声を絞り尽くされた次の目覚めとは思えない。呼び止められて男は起こしていた体を下ろし、対照的に感情で掠れた喉を酷使する。
「すまなかった……謝って許されるようなことだと思っていない。もう二度とお前に手は出さない、近付かない」
「お前のそういう所が大っ嫌いだ。俺が聞きたいのはそれじゃねぇ」
当然の様な辛辣な言葉と、感情の解らない背。即答で返され、シーツの直接上で五本の指が握られる、顔は背を向けて見えないが、ベルトラムには男の感情に怯えが含まれたのを感じた。そうか、と針の血液が体内に回る感覚に声も無く喘ぎながら、男はそう返すのが精一杯、そう、最初から許されるとは思っていなかったじゃあないか、そもそも自分には謝ることさえ許されてはいないのだ。
「…………お前は俺を殺したかったのか?」
体に最初感じた違和感は、完全に覚醒しきっていなかった体が混乱していただけだったらしい、もう何の支障はなく、あれら全て夢だったと言ってしまえれば信じれる程。いっそ夢で終わらせられた方が幸せだったのかもしれないが、生憎、この男もベルトラムも、そう器用な生き方は出来ない。
淫魔は生命活動の為に人を犯す、自力で生命エネルギーを作り出す事が出来ない閉じた精の青い色、それを補う為に人を襲い、犯し、喰らう。だが、男とベルトラムの種族は完全な同一ではないとはいえ、互いに性交で精を補給し合えないどころか吸い合いになって何処かへ流し去るだけ、生命活動からも切り離された、完全に無駄な暴力でしかない。肌を重ねあう事を望むことすらも。
「違う」
最初に謝罪する事が許されていないのなら、弁解をしようとすることすら本当は許されざることなのではないか、そういった考えが男の頭をじりじり焼いたが、気が付けばベルトラムの声に反応して唇が動いてしまう、ああして遠い場所で温まっていた時は何も喋りはしなかったというのに。強く握り締めた手の平を加えて強く握り締める。
「俺のプライドをズタズタにしたかったのか?」
「違う」
語尾が震え、握り締めた手の平で爪が皮膚を突き破る。思わず伸ばしてしまいそうになった腕に苛立ちを感じて、伸ばしかけて行き場の無くなった腕を組み、一つしか無い答えに男は目を瞑った。自分で自分を抱き締める、美しく気高い魂をどうしても自分と同じ場所まで堕とさずにいられない、正しく人の業、痛みなんて感じない筈の傷が痛む。
「お前は、俺が……欲しかったのか?」
薄ぼんやりとした布団に染み込んだ体温。あまりの無機物的な態度に鉛の血液だと思い込んでいたものから移ったそれは、徐々にベルトラムの淫魔の体温に塗り潰されて、もう消えかけている。もぞ、と身動きをする、さっさと『淫魔らしく』面倒を嫌って出て行くことなんて簡単だったが、初めて覗かせた激情、いきものの証。ベルトラムは逃げ出してやる気にはなれなかった。
「ああ……!」
「なら、許す」
答えに男が眦を裂く。対するベルトラムはその声と同じ様に静まった気分で、心底驚愕しているらしい男の態度に逆に驚いた。なんだ、そんなに許して欲しくなかった訳じゃ無いだろう、お前は「許してくれ」と言ったのだから。仮に言っていなかったとしても、ベルトラムには関係無い。布団で守り込んでいた体を解く。
波が寄せるように此方に戻ってきた布団に押されるように、まだ自分が許されたことを理解出来ない男は、ベッドの端ぎりぎりまで逃げる。言っておくが同情じゃないからな、と付け足して、ベルトラムは逃げた男をずりずり背を向けたまま追う。ベッドから落ちても追ってやろうと思っていたが、それより早くベルトラムの気質を理解している男は動くのを止めて、落ちない程度に真ん中まで寄った。
最初にああして添い寝をしていたのは、幾ら事後処理は完璧だったとはいえ、ベルトラムを一人で放置することも、全て無かったことにしてしまうことが出来なかったから。目を覚ました時と同じ様に、肌と肌こそ触れてはいないが互いの体温を感じることが出来る距離まで近寄り、自分よりも低く高い体温を感じて、許し、許されたことが現実なのだと実感しあう。
「欲しい物があって、欲しい物が欲しいだけあって、お前は欲しい物を手に入れる力があった。なら、手に入れようと手を伸ばして当然だろ? 対象が、物じゃなくて俺だっただけだ……俺だってそうしている、欲しい物は手を伸ばして手に入れてきた。そうじゃなきゃ何んも欲しい物なんて手に入りやしない。これからもそうだ。お前は、俺達よりもずっと『淫魔』になるのが遅かったんだ、ずっとずっと遅れてそうすることを覚えて、羽が生えて飛ぶことを覚えるみたいに、これから制御の仕方を知る。そうだろう? だから、許せる」
はっきりと、迷いや影など最初から無いかのような、おそらく自らの発言に一片の疑いも持っていない風のベルトラムのそれは、まるで当然のことを話すかのように直撃で、ある種の傲慢ともとれるほど堂々としていたが、哀れみの欠片も含まれていない分するりと胃の府に治まり、夜の闇と同じ雑じり気を持たない冷たく清らかな高潔さがそこにあった。
「……それぞ正に淫魔流、だな」
「『ゴウニイレバゴウニシタガエ』って、お前の故郷の言葉だろ?」
解いた腕を男は伸ばしたが、肩が動いて引っ込める。まさかベルトラムに日本語の説教をされるとは思っていなかった男は、張り詰めていた空気を一瞬ほど居て、小さく笑った。組んでいた腕を解く、組まれていた腕の分だけ隙間が開いて、薄っすら汗でそこが冷える。ぎく、とベルトラムの肩甲骨が皮膚の下で蠢き、思い出したように、だからってスタンガンは無しな、と脅しを含んだ声色でしゅう、と喉を鳴らす。
「それから、あいつらがお前のことあんなに怒ってたのは俺のこと犯したってのもあるけど、どうして何も言ってくれなかった、って方が強いと思うぜ」
沈黙、男はよくよく考えベルトラムは思い出し、嫌な記憶に二人で身震いをして思い出さない事にした。ベルトラムがそう言うのなら絶対にそうだ、不明確で正体不明の感情を暴力でしか表せないのは、男と出会ったばかりの最初の頃の彼らもよくやっていた。どうしても諦めきれない腕を、そっと被せる直前に置いて、男は髪を撫でた。痒い所に指を被せ、ベルトラムは宣言通りに許す。
男が焦がれたプライド。自由を語って自由に囚われては本末転倒、不自由で満足して快適に暮らしているのだとすれば、それもまた自由。淫魔が淫魔を欲しがって、肌を重ねて愛し合うことを望むのもまた自由、無駄なんてない、あったとしても何もかもひっくるめて愛する事を愛する魂を愛せ、それが淫魔流。仮に流儀に反したとして、自分の信じれる道を行け、それが淫魔流。学ぶ事が必要ならまだ救いがある、そう、男は確かにベルトラムに許され、深い安堵を得て目を瞑る。
「これが最後で良い、抱き締めて……良いか?」
欲しかったものがあった、欲しいものを手に入れようと躍起になる自分に疲れ、握りつぶしてしまうかもしれないという恐怖に慄いて、何も出来ないまま、それでも欲しくて、あまりにも遠回りをしてしまった。欲しいなら、知りたいなら、最初からこうして単純に言葉を交わせばよかったのに。幸い言語は別たれていないのだから。
行き着く先で手に入るものは最初に欲しがっていたものと違うかもしれない、それでも、ベルトラムが嫌悪する欲しくもない物を手に入れたがる醜い人間の欲と違って、純粋で邪気の無い欲から生まれたものは、自分が宝だと満足してしているのなら魂に刻まれたそれの価値は誰も侵すことは出来ない。貪る事に夢中で気がつけなかったそれは、まるで自由であることに似ていた。
「そうか、これで最後にする気なのか……ま、そっちの方が俺は都合が良い」
何の合図もせずにベルトラムはぐるり、と振り返って、突然の事に驚いて自分の顔をひたひた触りだした男を指差して笑う。どんなおぞましいことになっているかと思い覚悟を決めたというのに、ちゃんと出来上がっているではないか、と思って頬を触ってみると、ぷにぷに、と確かに少しだけ皮膚が薄いような脆い感触がして、男は心成しかくすぐったそうににしている。折角なのだから色眼鏡も外していれば良かったのに。
やっぱりお前は俺に声だけの時の方が感情が解り易い、と、多分安らいでいるのであろうこんな時も死んだ魚の様な目をしているのを見て、ベルトラムは大人しく頬を撫でることを許す男の瞼に指を当てた。潰されても復活するとかといって痛くない訳では無い、少し渋るが瞼は閉じられて、ふよふよ柔らかい皮の感触と微かに指に付く脂を虐めて、遊んだ。
「お前がしないってんなら、次からは」
無防備に開けっ放しになった唇に噛み突く様に自分の唇を重ね、何が起こったか解らず反応が遅れて半開きのままのそこから、舌を強引に捻じ込んで強く強く吸い、直ぐに答えてくる舌をやわらかく噛む。くちゅ、と頭の奥に響く水音に煽られながら、まだ今度のは誰も触ったことがないだろう唇と舌の柔らかさを味わう。
「俺が抱く」
陵辱の最中にも欠かさずに注ぎ込まれた精と同じ様に、今度は口内に満ちた唾液を混ぜあいながら、ぞくぞく快感に震え始めた脊柱に身を任せ、内頬を舌で撫であう。両手で顎を挟むようにしながら深く繋がりあい、牙になることを知った鋭い犬歯のある歯列をなぞり、とろりと零れた唾液を指で掬って唇を湿らせるようにして。
もっと、もっと、深く、深く、深く、深く。ちゅくちゅく水音は激しくなり、何度も角度を変えて愛し合う。重ねられたままの唇から漏れる息、空気を求めて一瞬だけ耳を掠めて広がる前に互いの中に戻され、広がり染み行く嬌声。辛抱堪らなくなって、何よりも純粋な『欲』に従い、ベルトラムは繋がりを解いた。

ああ、ただ餓えて喰らう時はすっかり忘れていたが、やっぱりキスがあった方が良い。
もう二度と忘れやしないとも。
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