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SSS:ラブラブなご様子です。 [日常編]

此方は浅海由梨奈さんのみ、お持ち帰り・転載可能です。



ハズカシイトコみせたげる☆
登場人物:ベルトラム バルドゥイン
(弟夫婦の愛の形)
(ネコミミモード☆)






ハズカシイトコみせたげる☆


今彼は実兄に正気を疑われている、弟の額に手を当てて熱を確かめるバルドゥインは青い顔を更に真っ青にして、羽交い絞めにされてもがく弟に、気は確かか、と叫ぶ。それもその筈だ、あのプライドを何より重んじていたベルトラムが、白いネコミミフードを被り猫手のポーズを取って、御主人様ご奉仕するニャン、と語尾にハートが付きそうな台詞を吐いたのだから。これはもう明らかに正気の沙汰ではない。激しくもがき、腕を振り払おうとするベルトラムは、自分は正気だと必死で主張するが、バルドゥインの経験則上自分を正気だと言う奴ほどろくでもない奴ばかりだった為、絞める腕を骨が軋む程強くして正気に戻れと呼びかける。ゆらゆら、フード後部の毛足の長い尻尾が揺れる。
出しっ放しになっている兄の羽がばっさばっさ、と羽ばたき、壁に掛かっているカレンダーが翻る。尻尾が犬の様だ。だが、流石にベルトラムも成人したインキュバスであり、潜在する力は矮小な人間とは比較にならない、殆ど力づくで腋を突破したベルトラムは、興奮のあまりに眼が泳いでいる兄の頬をぺしぺしと二、三回叩き、顔を合わせて目の焦点が合ったことを確認する。弟を正気を正す気が少々自分が正気を失っていたバルドゥインは、真剣な顔をして瞳を覗き込んでくる弟を見て、ベルトラムが正気なことと、ネコミミフードはベルトラムの中では正気の沙汰なのだということを知り、羽をしまって心成しか浮いていた足を地に着けた。
「こーゆー時って、キスするんだっけ?w」
決まり悪そうに片眉を下げ、肩を竦ませて見せるバルドゥインに、ベルトラムは冗談めかして唇をちゅっ、と鳴らす。片方は男を抱くことを覚え、もう片方は抱かれることを覚えた二人だが、同じ淫魔同士であることを除いても流石に兄弟同士では一線を超える気にはなれない。格好は何時も通りの半裸、頭に被ったネコミミフード、耳の中のピンクが眩しいそれを物言いたげに指差すバルドゥイン、もこもこふさふさのそれは見るからに手触りが良さそうで、ベルトラムは視線に気が付いてふわふわ綿入れの耳を掴む。むにゅ、と柔らかそうに大きな手の平で形を変えるそれに、つい触りたくなったバルドゥインは感触を思い浮かべながら自分の手を握る。
気持ち良い物、ふわふわもこもこふさふさした物を見ると触りたくなる、そんな兄の性分を解らない程兄弟の付き合いは短くない。今度はわざと自分の首の辺りに手を回し、尻尾を手に握ると、毛足が長く温かいそれを季節外れのマフラーにする。あぁん、と腰が砕けるようなバルドゥインの喘ぎ声、首元の空を両手で揉む動作をしながら、時折頬擦りするように空に顔を押し付けるような動作をする。何時もからかう仕返し、これ見よがしに首元にボンボン飾りをふかふかしながら、ベルトラムは兄が何故あんなに悶えているのかは理解出来ないが、頬に当たるフードの内側のふさふさは気持ちが良いと手を当てて頬擦りした。また兄が喘ぐ、はぁん、艶を含んでいる筈のそれは動作の所為で気持ち悪い。
今朝起きたら突然嫁二人が部屋に押しかけて来て、無理矢理ネコミミフードを被せられ、今日一日きっかり今から二十四時間一度でもそれを外したらお前の性器の型を取って作ったバイブで大変なことにしてやる、といわれてしぶしぶ付けた後、兄に萌え台詞を言って来いと言われた時はどうなるかと思ったが、意外にも機能美を取った設計だったらしく、日常生活への支障は周りの反応以外に無かった。後者は駄目だったが。所々荒い縫い目もあるが、これで処女作だというのだから、嫁達はベルトラムの印象より器用なのかもしれない。荒い息を吐きながら、そろそろ涎でも垂らしそうなバルドゥインをちょいちょいと手招きして、潮時を弁えたベルトラムは触ってもいいぞ、と少し毛がぺったんこになった首に巻いたネコ尻尾を解いた。
「ったく、こんなんのどこがそんなに良いんだか」
また羽を放り出し、太陽のように眼を輝かせたバルドゥインは、まるでそれが天の恵み、とばかりに飛び付いて頬擦りをする。少し足を浮かせる程度に飛びながら、ネコミミとネコミミの間に頭を置き、右手は右耳、左手は左耳に持ち、そして左右の耳で頬をぱふぱふ、ぱふぱふ、まるで天にも昇る様な顔で顔を蕩かせる兄の表情は位置から弟に見えないが、もし見えたら今度気は確かか、正気に戻れ、と叫ぶのは弟の方だっただろう。幸せそうにふかふか、ふかふか、と口走るバルドゥインの腹をベルトラムは少し力を篭めて指で小突いてみるが、気が付いていないらしい、苦しんでいる場合ではない、とばかりに楽しむのを止めない。フードの天辺から息の生暖かさが伝わる。
「あー……あ~あぁ、ん、んん~、いいわー…いいわぁ~…コレ、いい……にしても如何したのよ、コレ」
「嫁が作った。二十四時間絶対に付けてろって」
顎を乗せられて、両手で挟まれる所為で半もみくちゃにされていたベルトラム、さてそろそろ尻尾、と羽をしまい、足を下ろしたバルドゥインの目が合う。瞳どころか顔まで輝いて見えた、バケツ一杯のコラーゲンを飲み干したかのように。むんず、毛足の長い尻尾は気持ちが良いがネコミミフードを被った人の首に巻くことを前提として設計されているので、そこまで長さはなく、バルドゥインが心置きなくふかふかする為にはベルトラム背中に回る必要がある。楽しそうに手を浮かれさせて自分の背後に回る兄を見ながら、ベルトラムは溜息を吐く。夢中になる兄、神出鬼没を地で行くあの二人には常に驚かされっ放しだったが、このネコミミフードには今度こそ妙な術でも掛かっているのではないかといぶかしむ。
背後に回る寸前に厭きれたな表情を浮かべているのを見逃さなかったバルドゥインは、このふかふかの行く末を考えて、ふかふかしながら考えた。おそらく、弟はその二十四時間とやらが過ぎたらこれを箪笥にしまうなりして、埃を被せたままにしてしまうだろう。背中合わせになり、柔らかいフードの尻尾は長い間放置してはきっと毛玉が出来て、埃の所為で黄ばんでしまう。勿体無い。白い毛並みを何度も逆撫でしては戻し、もこもこがとても気持ちが良かったことと、どんな意図があるにしろ、無理矢理被せられているにしろ、折角人が作ってくれた物を粗末に扱うことが忍びなくなり、バルドゥインはベルトラムに一つ提案することにした。背中越し、猫背の所為で前屈みになった背を背で小突く。
「いらないんだったら、二十四時間経ったらコレ俺にくれよー、大切にすっからさー?」
「駄目だ」
きっぱりと言い切られ、バルドゥインは面食らったように振り向く、当然背中合わせなのでベルトラムの顔は見えないが、別段感情の起伏がある訳でもないらしい。尻尾を引っ張られて後ろへ後ろへずれるフードを強引に引っ張って被りなおしながら、ベルトラムは半端に解けてしまったボンボン飾りを一度解き、蝶結びに直す。そういえば、今日は春だというのにとても寒かった、最近はどうも気温が安定としていない。温かで季節外れな手作りネコミミフード、これを作ったあの騒がしい嫁二人はどんな考えでこれを被せたのか、ベルトラムはふと一つの可能性を頭に思い浮かべ、まさか、と眉を寄せる。まさか、寒いから温かくしようだなんて、あの二人が自分を気遣う訳が無い、どうせ気紛れだろう。背に体重を乗せる。
突然背中の重量が増え、一瞬怯んだまま倒れてしまいそうになったバルドゥインは、負けるか、と踏ん張ってベルトラムを押す。当然ベルトラムも倒れそうに鳴るのでバルドゥインの背を更に強く押し返し、て、肩透かしならぬ背透かしをされて勢いのあまり完全に兄の背に乗せられてしまう。何だか負けたらしい、何が勝ちだったのかは忘れたが。バルドゥインは空を足で掻く弟を言葉に驚いた。弟のことだからあの二人に貰ったとなればそれなりのことをいぶかしんで、あっさり手放すと思っていたのだが、それはどうやら考え違いだったらしい。ひゅう、とわざとらしく口笛を吹いて茶化す、意味は自分の心の中にだけあれば十分。理由を聞いても教えてもらえないことを知っているベルトラムは、浮んでいた甘い考えにふ、と笑う。
「第一っ、こいつをお前にやったら、あいつらまーた泣くだろうからな」
どさり、突然手を放されて重力に従い床に落ちるベルトラム、尻尾を首に巻きっ放しだった所為で一緒にしゃがまなければ苦しい思いをする所だったバルドゥインも尻を付く。あの笑ったような顔ではなく、常に楽しげに笑っている二人と関わる事は決して少なくないが、破天荒な奴が多い淫魔から見てもあのハチャメチャが人間の形になったような二人が、片方でも泣いている所なんて見た事が無い。しかも、また? 嘘泣きに引っ掛かる程ベルトラムも幼くはなく、ベルトラムの語調には笑いが含まれてはいたが冗談を言っている風でもなかった。痛む尻と腰に手を当てて摩り、ちょっとした悪態を吐きながら、振り向こうとすると兄が狐に抓まれた様な顔をしていて、ベルトラムはその言葉が更なる追い討ちになるとも知らず、さも当然とばかりに首を傾げる。そういえば、首を傾げる癖が移ってしまった家人はそれなりに多いが、少し顎を横に逸らしながら首を傾げる癖は、ノッポの方の彼の嫁と彼一人。

「なーに狐に抓まれたみたいな顔してんだよ兄貴、よく泣くだろー? あいつら」
バルドゥインは自分が余計な気を使いすぎていたことを自覚した。
「あ、あの、なんかすんませんでした」
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