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閑話休題:だって、きっとそれって悪く無いことだわ。 [本編]

此方は浅海由梨奈さんのみ、お持ち帰り・転載可能です。


閑話休題
上弦の月

登場キャラ:ベルねーさん 三つ子?実はパチモン
ちょっと:三つ子(回想のみ) 

まるはだか度:★★★★★
精神有害度:★★☆☆☆
(由梨奈さんちの淫魔パラレルです)
(色々と設定が違います)
プロローグと本編の間に入る話
(エロはないがねーさんが丸裸)

【設定の差異】
☆御一家全員異端審問官
☆&人間





風の無い磨きぬかれた鏡の様な夜、星を覆う程に留まり月明かりを孕む朧雲、そこから顔を覗かせるのは、今は雲に隠されて見えない、なめからな金色の月。
影に灯りは隠されているというのに、なお月光を地上に下ろすそれは、闇夜に生きる者にとって手元を照らす助けでもあり、自らの姿を浮き彫りにする敵でもある。
それでも、月はそんな事は知らない。使いの星と共に雲に包まれぷかぷかと、日の光を受けながらその誘惑的な瞳を好きに下ろし、好きな物を見るだけだ。
月の瞳に覗かれる人間に、あの気紛れな月が何を思って、何を考えて自分を見ているのかだなんて、理解出来やしない。出来る事といえば、無防備に虚空を見上げ、光に目を向けることだけ。

ならば、その月の加護を受け故にそうなのか、日の瞳から外れ、産まれながらに闇夜に生き、冷たくも清らかな月の母に見守られる者は、今日輝く母の心が解ったりするのだろうか。

否、解らないだろう。
月の娘達は、一度母の手元を離れれば最期、水と油が互いを拒絶し合い、弾きあうように、元は一つであっても二度と月と同じ物には戻ろうとしないからだ。

地上に堕ちた月の娘達が住まう場所、そこは母の愛も無く、父の加護さえない。
そこは輝きを持ってなどおらず、強い餓えと渇きが根底に潜み、生物は不滅の物でなく、何時かはその先へと連れ去られる定めにあった。


だが、月の娘達の世界は。
とても広く、無限に広がり続けていた。



上弦の月



街の中心部から少々外れた場所にある、何処か朽ちた雰囲気を漂わせるアパート。剥げかけた白いペンキが、まるで古くなった皮の様にべろりと剥けて、その下の金を極力使わないように、それでいて見得を張れる程度の安っぽい壁を曝している。
十部屋ある部屋は、現在となっては何部屋も空室となっており、その現状を悲観した先代の大家は思い余った挙句、自室で首を吊った現在、大家は不幸にもその死体の第一発見者である息子が継いだ。
もう残りが少なくなり、その数少ない店子の一組が引越しを考え始め、日々出て行かれないためのご機嫌取りをし続けている、このままでは親と同じ末路を辿りかねない大家の部屋。
何時もは店子のご機嫌取りのために、夜遅くまで冬は雪かき、秋は落ち葉掃きと、忙しく働き回っては泥の様に眠る彼の部屋に、今日はこんな時間になっても灯りがついたまま、いまだ消えない。
今は寝静まった、普段あれだけ怯えるように仕え続ける店子者達に対して気遣いも無く、アパートと同じく、古くスプリングのイカレたベッドが軋む音を立てる。
彼の前回いた恋人は、母性的な人間であったが、人生に刺激を求める人間でもあって、店子に聞き耳を立てられる事を随時気にし続ける、強迫観念に似た物を持った彼を、つい最近見捨てたばかりだ。

そこで恋人の代わりにいるのは、異形の羽と尾持つ、彼の孤独に付け込み、精を貪る女淫魔。

角が目立つ普段一纏めにした長い紫の髪を下ろし、髪に似た色の人外の肌を艶めかしく躍らせながら、愉悦の声を抑える事無く上げている。
相手が絶頂を迎えると共に、部屋に響く音は止んだ。暫くの時間が経つと、行為の余韻を名残惜しく思いながらも、自分を恋人と勘違いして涙を流していた一夜の相手を捨て置くと、淫魔は自分の胎から漏れ出る白濁の後始末を始めた。
今回の気紛れは中々楽しめたらしく、最中相手が叫んだ名前を思い出しては、その『文字通り』子が母を求めるような様を浮かべて、不思議な事もある物だと、退屈が紛れたことを喜ぶ。

所謂、ユニットバス形式になった狭いシャワールームで温い湯を浴びて体を洗い、何に急かされる事も無く体を拭いて出ると、そこに先程までの相手がすっかり姿を消していて、代わりにベッドに見知った顔が腰掛けていることに気が付く。
にこり、と例えようの無い顔を二人並んで向けているのは、人間離れした雰囲気を持つ、白髪の子供だ。
髪を拭き終わった女淫魔、バルベルはその予期せぬ来客に対して、今日は何をしてもとても退屈しない良い日だと、心からそう思い、少し笑う。

「おねーさん、遊びに来たよ」
「それとも、今から延長戦だった?」

「んーんv 今丁度終わったところvV
 ……あれ? さっきまでベッドに居た子は?」

「出てってもらったの」
「ぽぉい、したの」

要約するのだとしたら、どうやら何かの手段で居場所を突き止め、遊びに来た所、ベッドの上に無粋な物が眠っていたため、外に捨ててきたらしい。
だとしたらその捨てられた相手は、今頃丸裸で外に転がされている事になるが、何者かにそれが見つかった場合、彼の人生は店子に全員出て行かれる前に終了してしまうだろう。だが、今此処にそれを哀れむ人間はいない。
腰掛けていた白い子供が一人、自分のノーフレームの眼鏡を外して、もう片方の白い子供に預けると、色を頼りにバルベルの下にやって来ると、膝を折って腰の辺りに自分の顔をやって、抱きついた。
この子供達は、バルベルに会うと必ずと言って良い程、こうして甘えるように擦り寄ってくる。まるで猫か何かのような姿に、バルベルはそれが可愛く思えてならない。
抱きつく子供の顎を指で少し上げると、猫のような子供に、猫にするように喉を撫でてやる。すると子供は、くるくると何処から出しているのか解らないが、喉を鳴らして喜んだ。

もう片方は、どうやらその様子に居ても経っても居られなくなったらしく、預けられた眼鏡をベッドに投げ捨てると、既に抱きついている兄弟に意味も無く割り込むと、バルベルの首元に軽く噛みつく。眼鏡をベッドに投げたのが唯一の良心だ。
くすぐったいような感覚、場合によっては誘っているような行動に、バルベルはこのまま押し倒して、ベッドで遊びの続きをしても良いかとも思ったが、その前に気になる事がある。

「ぁ……ねえ、ちょっと聞きたいんだけど」

「なにー」
「止めないよー」

「続きがしたいから、止めないでv って、そうじゃなくて……。
 あんた達、何か……髪型とか変えた?」

何か。とは漠然な物ではあったが、去年の花と今年の花が別の物であるように、此処に居る二人の子供が何かがおかしい。バルベルはその何かを今感じていた。
だが、その何かが何なのか、明確な物が解らない。見たところおかしい事は無く、前に会った時の通りの、白い髪に白い肌、片方の黒い赤茶色の目を不思議そうな顔にする同じ顔の二人に、妙な物は無い。
二人の白い子供は、笑い顔から表情を変えて、同じ顔をしてこちら側をじっと見たあと、否定の意味らしく首を横に二回振る。

目線を移せば、ベッドの上には更にもう一人座っている。黒い髪、片方の黒い青い目、褐色の肌、白い二人と同じ顔。見知った黒い子供だ。
黒い子供は同時に現れる事もあったが、遅れて出てくる事も多く、気が付けば現れるという特徴も、実に何時も通りの光景。
それでも、バルベルは違和感を感じてしまってしかたがない。寧ろ、三人集まったことで、更に違和感が隠せなくなった気がする。
覗き込んでくる黒い子供が、少し心配そうな無表情をしながら、バルベルの洗い髪に手を伸ばすと、まだ乾かないしっとりと濡れたそれを一房手にとって、指に絡めた。
濡れた髪に触れられるのは、軽く触れられているだけだというのに、髪が束になっているせいか、頭に生えた角に触られているような、そんなことを考えてしまう。

「おねーさん、嘘は好き?」

「嘘って、あの吐く嘘のこと?」

「うん」

気が付くと、自分に抱きついていた二人はベットの方に戻っていたらしく、後からやってくる肌寒さと、軽い喪失感を感じると、腰掛ける二人もそれに続く。
三人が順番に話す喋り方も、何もかもが同じだというのに、一体何が違うのだろうか。質問されたように、三人の子供は何か、嘘を隠しているのだろうか。
バルベルはそれを不思議に思いはしたが、その違和感に恐怖するのではなく、その違和感に疑問を感じると、それが一体何なのか、その事その物に興味を持ち始めていた。
腰掛ける内の一人が、シーツの何処かに落ちてしまっているであろう眼鏡を掛け直している時、もう片方の白い子供が、両手をぶらりと力無く下げたまま、順番の通りに会話に参加してくる。
そのまま歩いて子供と同じ様ベッドに腰掛けると、二人が間を詰めるように近付いて、体重を掛けないように、甘えるようにしなだれ掛かり、喉を鳴らすような声を上げた。
置いて行かれた黒い子供は、少し残念そうな顔をした後やっと眼鏡を見つけた子供の隣に座って、バルベルの言う言葉を聞き逃すまいと聞き耳を立てる。

「理由は要らないから、教えてー」

「どーだろ。好きか嫌いかなんて考えたことないけど……?v
 吐かない訳じゃ無いけど、あんまり好きじゃないかも」

「なんで?」

それを聞いたのは、眼鏡を掛けて、全くと言って良い程見えていない視界が明るくなった子供。何時の間にか復活した笑い顔で、バルベルの頬を一撫でする。
理由は要らないという言葉に言葉を繋げたというのに、更に理由を求める理不尽さは、子供特有の理不尽さに似ていた。
バルベルがその手に自分の手を当てて、肌と肌が触れるのを返してやると、子供は今度は自分から眼鏡を投げ捨てて、腰掛けたバルベルの膝に頬を寄せて楽しげに。
その抜け駆けに無言で抗議しているのか、黒い子供はぬけがけをした相手に対して、バルベルの上に乗っていない下半身部分に自分の体重を乗せた。
妙に滑稽な様子の面白さに、バルベルが思わず笑い出すと、感情を表すようににょろにょろと好き勝手に動く尾を、一人赤茶と黒の目で見詰める子供が不思議そうにする。

何時の間にか三人で笑い合い、全員一笑い終わった後、バルベルは息を吐くように、三人が聞き耳を立てる答えを言った。

「だって、嘘ばっかり言ってたら、本当のことを言った時に、本当のことのありがたみが薄れちゃうじゃない」

細い腕を白い子供に伸ばすと、バルベルは二の腕を子供の首の後ろに回し、白黒二人が自分の膝の辺りに固まっている場所に、もう一人の子供を引き倒す。
膝の上に白白黒の子供団子を作って、満足げにした後、バルベルはその三つ重なったそれの背に唇を寄せて、息を囁くように言う。

「だーいすきv
 ……ほら、こっちの方が良かったでしょ?vv」

「ってことは、おねーさんは自分達に嘘吐いてないってこと?」
「ホント? それだったら嬉しいな、すっごく」
「ねぇ、教えてくれなくてもいいけど、おしえてよ」

「ふふ、ナイショv
 謎は女を綺麗にするのよvV
 それにしても、何で突然嘘の話なんてしたの?」

「身内にいるからさ」
「嘘が好きなのと」
「嫌いなのが」

この子供達の身内といえば、『異端審問官』国の淫魔狩りの指揮をする淫魔の天敵であって、淫魔を狩る違法ハンターを取り締まり、告発された人間に拷問を加える、そんな奴等だ。
通常そう聞けば、嘘が嫌いなのは理に適っている気がするが、嘘が好きとはどういう状態なのだろうか。異端審問官はその立場を持って、人殺しさえ負かり通せる。そういった意味ならば、彼等はとんでもない嘘吐きである。
バルベルが自分の膝の上の三人を軽く押すと、押したのは一番上一人だけだったというのに、如何いうわけか全員に伝わったらしく、全員が膝の上から退く。
自由になった足を横に伸ばし、今度は元の位置に戻った白と黒の子供の膝の上に、ゆったりと足を乗せて、少し痺れてしまった足を楽しむ。

「ふーん……じゃあ、嘘が無いことしましょっv」

黒色に浮ぶ銀眼に艶が浮ぶのは、嘘も真も関係の無い、ただそこに自分と相手が居るだけの場所への合図。
無邪気な言い方とは裏腹に、その肢体の全てには男を誘うに相応しい、人間の欲望を生々しく魅入るそれが、ありありと見て取れる。
最初に服を脱いだのは誰だか考えても居ないが、白い脇肌に浮き出す醜い傷痕に指を這わせると、その感触はやっぱり嘘のようだった。

だが、今はそんなことどうでも良い。
気になるのならば、『月を近くしてしまえば良い』

本当の始まりと同じ様に。






「おねーさん」

「なーに?」

「今は好きって言わないよ」

「ケチんぼ」

「ダメ」

「むー……残念ね」

「「「だって、それはまだ、自分達の番じゃないから」」」

「意味が今一解らないけど……やるなって言われると、やりたくなるのよねv
 そんなに言われると、言わせたくなっちゃう……vV


雲深き、今宵静かに地を見下ろす瞳は上弦の月、下弦の月に良く似た金の単眼は、それと近しく同じ夜。
同じくして、二度現れる違う幼き月。
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